法然上人

                              法然上人

                            清盛天下 取りたれば
                            南都の寺院 反抗す
                            重衡(シゲヒラ)に命じ 奈良の寺
                            東大寺と共 興福寺
                            焼き討ちにして 滅ぼしき
                            世の人曰はく 世も末に
                            なりにけるかな 怖ろしや

                            源氏に追はれ 都より
                            平家下りて 落ち行かん
                            一ノ谷にて 重衡は
                            戦(イクサ)に負けて 捕らえらる
                            京に送られ 閉ざされる

                            重衡罪の 大にして
                            耐えざることの 重くして
                            法然上人 呼びたりて
                            罪山のごと 高くして
                            善行一つも あらざりき
                            死なば地獄は 必定なり
                            吾に救ひは あらざらん
                            涙流して 懇願す
                            
                            法然上人 言はれたり
                            涙ながらに 阿弥陀仏の
                            限りなき慈悲 受け入れて
                            念仏唱え つづけかし
                            されば浄土に 往生せん

                            救はるること なき身にて
                            念仏のみが 救ひなり
                            凡てなくして 無一文
                            頼る物をも あらずして
                            念仏のほか あらざりき
                            御仏のみぞ ありたりや
                            有難きこと 限りなし
                            安らかにして 救はれて
                            鎌倉殿へ 護送さる



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